もう十年ほど前になるでしょうか。
京都国立博物館で、「スターウォーズ展」が開催されました。
開催中、大変な賑わいで記録的な入場者が博物館へ足を運びました。
人々のニーズと、博物館からの発信が見事に融合し、成功した例でしょう。
今回はそんな「美術館」と「ファッション」にフォーカスを当てます。
過去のイベントの情報なども含まれています。
この様なイベントがあったんだなぁとご覧になってください。
Contents
美術館は企画がいのち
美術館は「企画展」が重要です。
学芸員が知恵を絞って考え出し、入館者を感動させ、心を豊かにさせなければなりません。
薄暗い展示室の、すすけた作品が壁に掛かっているという往年の美術館の時代は終焉しました。
〜山手線内の5つの個性が光る美術館〜
今回は、1つのテーマに絞った目線で、美術館と展示の案内を兼ね、山手線内の5カ所の美術館をご紹介し、美術館を考えてみます。
「美術館でファッションを語る」というお話しです。
春には、桜が咲き誇ります。年度の変わり目で忙しくなるでしょう。
紹介する美術館の展覧会は、その桜が咲く前には、ほとんどが終わってしまいます。
行くのは冬がベストではないでしょうか。
パリ発 オートクチュール!に圧倒される
3/4~5/22まで。
~三菱一号館美術館 歴史的建造物も一緒に見よう~
三菱一号館美術館は、丸の内に2010年に開館した新しい美術館ですが、建物は国宝級の明治近代建築です。
最近、建築当時の姿にリニューアルした辰野金吾の傑作、「東京駅」の直ぐそばです。
ロートレックを多く所蔵していることでも有名な、19世紀近代美術の傑出した企画展を連発しています。
~生涯着ることは無いだろう、滅多に見れない展覧会~
ご存じだとは思いますが、オートクチュールとは、顧客の注文に合わせてデザイナー主導で仕立てる高級服。それも、猛烈に高級な注文服です。
美術館が、3つの見所を提案しています。
1 パリ市立モード美術館が監修し、パリで人気を博したファッション展の来日
2 19世紀後半から現代までのオートクチュールの歴史を概観する一大 ファッション史
3 時代を映し出すシルエット、脈々と受け継がれる世界最高峰の刺繍・羽根細工・コサージュなどの職人技
と、企画意図をアピールしています。
そして・・・館内の「Café1894」でファッションを語るのもいいのではないでしょうか?
「ファッション史の愉しみ」を観に行こう
~世田谷美術館、砧公園内の緑豊かな美術館~
世田谷現代美術の収集と、企画展は評価に値する立派に頑張っている美術館です。
この展覧会は、西洋服飾史研究家、故・石山彰氏の所蔵品で、20世紀初頭までのファッション・ブックとファッション・プ レートなどを展示し、併せて「神戸ファッション美術館」が所蔵する同時代の衣装も展示されます。
ファッションの歴史的流れを勉強出来ます。
そして・・・美術館内の中庭に立地する、オープン・カフェ「SeTabi Café」でファッションを語るのも素敵ではないでしょうか?
「美しいボロ布展」は江戸の歴史
~アミューズ美術館 浅草寺と目と鼻の先~
アミューズ美術館は浅草にあります。
「布文化と浮世絵の美術館」を標榜しています。
大手芸能プロダクションが運営する、異色の美術館です。
布文化を中心とした、無名の職人や一般女性の手仕事による工芸品を展示しています。
浅草寺の直ぐ東にあるので、浅草見物を兼ねて行くのも良いでしょう。
~江戸のエコ文化を痛切に感じる~
今回の企画展「美しいボロ布展」で感じることは、ほんの少し前まではひとつの着物を、何代にも渡って着ることは貧しさでもないし、恥ずかしいことでも何でもありませんでした。
使い続けることが、当時の江戸では当たり前でした。
茶碗が割れても、「接ぎや」という商売があり、キレイに復元します。
江戸文化が世界的なエコ都市だったことの証でもあります。
「ボロ布」は文化です。
ジーンズ好きの若者が、キレイに洒落たパッチをしてはき続けているのは、江戸文化の名残でしょうか。
そして・・・美術館を一歩出れば、浅草の中心部です。
Caféでも、何でもあります。
浅草で、いにしえのファッションを語るのもいいですね。
服装に見る魔除けのカタチ
~文化学園服飾博物館 名前の通りの服飾の殿堂~
文化学園服飾博物館は、名前の通りファッションの殿堂です。
日本のファッションの総合教育機関として、確固たる印象を受けます。
しかし、ここに服飾博物館があることは余り知られていません。
行ってみると解りますが、都会の中心にあります。
~服を着ることの意味~
暑さ寒さに対する温熱調節だけでなく、身を護るのも服の大きな役割です。
昔は目に見えないものを「魔」と考え、魔を追い払うために文様、素材を身にまといました。
企画の意図を見ると『魔の侵入口と考えられた衣服の開口部や目の行き届かない背部には、刺繍やビーズなどで結界を築き、耳や額など人間の機能や生命にかかわる大事な部分には、護符の意味を持つアクセサリーを身につけ 身の安全を祈りました』とあります。
今回の展覧会はアジア・アフリカをメインに、各服飾に現れる多種多様な魔除けの姿を紹介しています。
そして・・・博物館を出れば、そこは西新宿のど真ん中です。
新宿の中心で、ファッションを語るのもまたよし。
言うこと無し! 三井家のおひなさま
「三井家のおひなさま」展
三井記念美術館は、東京日本橋にある昭和初期の歴史的建築物、「三井本館」の最上階にあります。
国宝の志野茶碗 「卯花墻(うのはながき)」を所蔵していることでも有名な「三井」のお宝の殿堂です。
「三井家のおひなさま」展は、毎年この時期に展示される企画展です。
代々の三井家の夫人や、娘たちが所有していたひな人形を見ることが出来ます。
時代・時代の着物姿や、流行などがその雛の姿から彷彿とさせます。
日頃見ることの出来ない、圧倒的なおひな様を堪能できます。
筆者も昨年行きましたが、絶頂期の「三井」の一端を垣間見ることが出来ました。
名古屋の徳川美術館でも同じ企画展を開催しますが、双璧と行っても良い企画展です。
そして・・・なんと言っても日本橋です、三越本店でファッションを語りましょう。
日常に染みこんでいる「服」の世界
建築物が壊されたりして、消えてしまうのと同様に、「服」や「着物」も棄てられたり、燃やされたりしたら、それでお終いです。
これらの5つの展覧会には、丁寧に語り継がれ、守り継がれて、はじめて見ることが出来るものです。
そういう先人の持っていた、ファッション感覚や感性を改めて考えることは決して無駄ではありません。
美術館の魔法 日常からワープする
日常というのは、繰り返しだ!と言っても差し支え在りません。
繰り返しは、倦怠感を生みます。
倦怠感には、発見はありません。
惰性がつきまとうだけです。
美術館という鏡
人は趣味を持ち、スポーツをしたり、旅に出たりして倦怠感と戦っています。
今、美術館は、そういうけだるい生活感を一掃するエネルギーを持っています。
少なからず、そういう美術館が出現しています。
入場料を払い、展示室に入っていく・・・そこには全く自分の知らない世界が広がっています。
美術館は、「今のわたし」に出会う、一種の「遺失物収容所」かも知れません。
自分の亡くしたものや、忘れてしまったものに出会う、茫々たる砂漠の中のオアシスなのかもしれません。
そして・・・美術館Caféは、あなたに出会う時を待っていますよ。きっと・・・。(destael2016)
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